杵屋喜佐以満 (きねや きさいま 木村陽子) 

入会H104.23 チャーターメンバー 
S30.2.22生

〒920-0831金沢市東山3-15-7 TEL 076-252-4484
趣味:歌舞伎鑑賞





                  金沢素囃子

優美な世界 支える熱意

 “邦楽のオーケストラ”と呼ばれる金沢素囃子(すばやし)。邦楽や舞踊から囃子が独立したものだ。伝統を受け継ぐ三つの茶屋街の芸妓(げいぎ)らが用いる主な楽器は、小鼓(こづつみ)、大鼓(おおかわ)、太鼓、笛、三味線――。格調高く、優美で華麗な世界は、彼女らの地道な熱意が支えている。

 

 1人では完成させられない「総合芸術」が素囃子だと考える杵屋喜澄(きねやきずみ)(78)は、1人の気のゆるみで全体の印象が崩れてしまうことを恐れる。「良い舞台でも形はないけれど、人の心の中には残る。出演者全員が一生懸命でなければいけない」

 母は明治後期から大正にかけて長唄と素囃子を金沢に根づかせた初代・杵屋六以満(ろくいま)。今も、舞台で演奏する譜面はすべて自分で書き写すのは、教えどおりだ。「芸を高めるには毎日の努力しかない」。体に染みついた母の言葉を弟子にも引き継ぐ。

 素囃子のすそ野を広げるため、金沢市が4月に開講する「金沢素囃子子ども塾」の講師も務める。「受け継いだ芸を次世代に伝えていく」。それが使命なのだから。


杵屋六以満(現在は杵屋喜佐以満

 20歳を過ぎたころから、母・杵屋喜澄(二代・杵屋六以満)と並んで三味線や太鼓を教える三代・杵屋六以満(50)は、「最近、お弟子さんに母より厳しいと言われるの」。

 東山の自宅2階から流れてくる曲をもの心ついた時から耳にして、素囃子の調子が染みついた。けいこを始めたのは、小学生の時。部活動の代わりだった。好きなことをしていいと母は言ったが、「ほかにやりたいものもなかったし、けいこが好きだった」。

 最近、娘の千裕(16)がけいこを始めた。自分から言い出してくれたのがうれしかった。きっと母も同じ気持ちだったのだろうと思っている。